その2 告白のシナリオ
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高3の春。我が母校で一世一代の大イベント、体育祭が迫っていた。
さやを呼ぼう。
例外は勿論いるが、僕の母校の生徒は大方、体育祭をこよなく愛している。僕もその一人。さやにも体育祭の話は当然していた。僕の母校出身の男どもが振られる理由は体育祭の話しかしないからという都市伝説もある。とにかく熱い。リアルに1年間かけて準備する。体育祭が終わったら晴れて受験生となるのだ。
優勝して、さやに告白をしよう。
そう目論んでいた。
そんな中の、体育祭1週間前をきった頃。緊急ホームルーム。
学校に脅迫状が届いた。
内容はもう覚えてもないし覚えたくもないが、ようは体育祭を中止しろみたいな内容のことだった。前記の通りだが、母校の体育祭は本当にガチだ。今思えば一種の宗教だ。時には過激にもなる。それゆえか、学年内にアンチがいることもある。事実、体育祭で死ぬほど頑張っても英語の長文が読めるようになるわけではないもの。体育祭に思い入れもなく、受験勉強を優先したい人たちからすれば邪魔以外の何物でもない。
あとは体育祭を抜きにして一般の人の中にも母校にはアンチがいる。殺害予告が届いたことも何回かある。
脅迫状を受けて、先生と各組の責任者たちが集結し、緊急で会議を行っていたらしい。その結果、安全を最優先として今年度の体育祭は一般公開中止。日時はそのまま、ということになった。至極当たり前というか、一番ベストな形だと今では思う。苦渋の英断を高3という年齢で下した各組の責任者たちは本当にたくましいと思う。頭があがらない。
僕の学校の体育祭はそこそこ有名で沢山のお客さんが来る。生徒の家族、受験を考えている小学生とその親御さん、OB、彼氏の勇姿を見に来る彼女、友達に誘われてきた高校生、ごく少数のナンパされたい女子高生、純粋なファンのお年寄りなどなどとにかく観客も多いし、それも一つの魅力だった。それが一気になくなる。前代未聞だった。
さやの前で優勝して告白、思い描いていたストーリーは完全に吹き飛んだ。そういう意味で僕は終わったと思った。
いや、でも来れないなら来れないでいいから優勝した話をしてそのまま…などと浮かれていた。
そして当日。
惨敗。
6年間で一度も優勝を味わうことなく卒業した。
某今でしょ先生が言っていた
「負ける奴の特徴は3つ。思い込み、慢心、情報不足」
全てが当てはまっていた。今思えば本当に最低だった。
受験勉強をしないといけない。
さやのことを諦めようとした。
無理だった。
(続く)